成功しているカフェ・喫茶店のオーナーを中心に繁盛の秘訣を探るべく「デザインのぼりショップ」がインタビューを行っていきます。横浜から車でアクアラインを超えて千葉県へ。山中を抜けた先に広がる海沿いの道路脇に、かわいい看板が。海を背に車を走らせると、木々の間からジブリ作品に登場しそうな不思議な家が現れ、番犬のくま(♀)が店先で迎えてくれます。地元の方の生活に溶け込み、ゆったりとした時間を過ごす場になっているのが、今回ご紹介する「Cafe&ガラス工房 海遊魚」(以下海遊魚)さんです。
理想の生活を安房で実現
高校生の時に見た料理の鉄人に影響を受け、自分で料理を出すなら器も自分で作ろうと、岡山県の芸術大学でガラス制作を学びました。
両親の仕事の関係でブラジル滞在を経験。東京に戻り、田舎暮らしが自分に合ってると感じました。たまたま書店で目に止まった『半農半Xという生き方』(ソニーマガジンズ 塩見直紀著 2003)という本に出会い、幼少の頃から馴染みがあった安房へ移住を決意。
お店の前で『農』をしながらガラスとカフェで現金収入を得て、ゆっくりと暮らせたらいいなと思いました。自給自足の雑誌でたまたまこの物件を見つけ見学に来たら、デッキに立ったときに海が見え、ちょうど今の季節、梅と椿がすぐ目の前で咲いていたのが決め手です。都心であくせく働く生活に疑問を感じていたので、両親の後押しもあり思い切った開業ですが、お店から富士山も見えるし、ご近所さんも良い方ばかりでした」地元の工務店を紹介してもらい、大工さんと分担しながら最初の一ヶ月で和室をフローリングに張り替えるなどリノベーションをしました。得意なものづくり精神を活かし、壁塗りや石膏ボードの加工にも積極的。土地は出会いだというので、ここを見つけて、あっという間に移住しました。どうせ移住するなら中古物件を自分で手直ししたかったので、本当に良い所を見つけました。
地元食材で手作りメニュー
食材は、いまのところ近所の直売所で仕入れてて、お米は地元の農家さんを紹介してもらっています。できるだけ地元産と手作りで。味噌や醤油も、手作りできるものはできるだけ。安房マネーの会員のなかで、手作り醤油の会というのがあって、最初は知り合いの移住者の方に教わって一緒にやっていたんですが、いまは一人で作っています。最終的にその会は、自分で大豆を育てるところから作るのが目標なんです。
コーヒーを淹れる水は、車で40分離れた「名水100選 滝の不動尊」の湧き水を使っています。
お金をかけない宣伝方法
お母さんたちの口コミがすごいのですが、隠れ家みたいだからって気に入ったら逆に広めてくれないこともあるんです(笑)。広告費にはお金をかけないよう、たまたま舞い込んでくる旅行雑誌や房総のお店を特集している雑誌に掲載をしてもらっています。食べログには掲載依頼はしていませんが、お店に来てくれたお客さんがレビューを書き込んでくれたので、それを見て新たに来店してくれる方もいらっしゃいます」しかし、お店を始めたばかりの頃は、観光客を期待していたのに全然訪れなかったとか。蓋を開けてみるとお客さんの9割は地元のおじいちゃんやおばちゃんたちでした。夏はかき氷ののぼり旗を出し、それを見たお客さんが海岸から。店内の一階に畳があるので、乳児を連れたママさんが来ることも。いまは二階に新設したキッズルームも利用できます。地元新聞に掲載されたときは房総半島中からお客さんが来てくれました。また、全国ネットのテレビ番組で紹介されたときは、放映日当日からすぐ反応があり、その後一ヶ月間ほどはお客さんが途切れずあわただしい毎日。
都内だけでなく埼玉県からいらした方もいて、テレビに紹介された影響で全部のメニューをご注文してくれるといったこともありました。テレビ放映から二年経っても、テレビを見たと言って来てくれる人もいます。
でも、お店を始めたばかりの頃は、観光客を期待していたのに全然訪れなかったんです。蓋を開けてみるとお客さんの9割は地元のおじいちゃんやおばちゃんたちでした。夏はかき氷ののぼり旗を出し、それを見たお客さんが海岸から来てくれます。店内の一階に畳があるので、乳児を連れたママさんが来ることも。いまは二階に新設したキッズルームも利用できます。
補助金をのぼり旗に活用
やっぱり最初はのぼり旗にすごく抵抗がありました。ダサいというか。以前、車道側に設置していた置き看板が危ないと警察から注意され引っ込めたところ、いつも来てくれるお客さまには休業中かと思われ、仕方がなくのぼり旗の業者を調べ始めました。
インターネットでデザインのぼりショップが目に止まったので、これならお店の前に立ててもいいかなと思い買ってみたら、お客さんからものぼり旗がかわいいねと言われて、それでのぼり旗に対する抵抗が無くなりました。
「今回は商工会に教えてもらった補助金で、ウェブサイトと一緒にのぼり旗をフルオーダープランで作ろうと注文しました」と、終始にこやかにお話いただきました。自然を楽しみながら季節を肌で感じられる海遊魚は、地元の人々の生活に無くてはならない空間になっています。陽光がやわらかな店内は、子供連れから年配のご夫婦まで、幅広い層が居心地良く感じる空間でした。
(DNSニュースレターvol.3 2015/3/20発行分より抜粋)
Cafe&ガラス工房 海遊魚
代表者 東 愛乃さま
所在地 〒 299-1909 千葉県安房郡鋸南町大六1082-1
最寄駅 JR内房線 安房勝山駅徒歩16分
TEL 0470-55-4004
WEB cafe-kaiyuugyo.jp
営業時間 11:00~18:00(夕暮れ)
定休日 不定休